令和2年度事業報告
Ⅰ 概 況
1 経済概況等
令和2年度の我が国の状況をみますと、年度初めに新型コロナウイルスの感染防止を図るため、全国に緊急事態宣言が発令されて以降、その感染防止に全力で取り組んできた一年でありました。
新型コロナウイルスは、瞬く間に全世界に蔓延し、各国の経済活動を停滞させ、経済状況は大きく減速しました。
我が国においても、令和2年のGDPは通年で4.8%減と11年ぶりのマイナス成長となり、その減少幅は、リーマンショック(平成21年)の5.7%減に次ぐ過去2番目の大きさとなっています。
また、直近の景気状況について、内閣府が発表した令和3年3月の月例経済報告をみますと、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さが見られる。」としており、まだまだ厳しい状況にあります。
更に、日本銀行が発表している全国短期経済観測調査(日銀短観)により中小製造業の景気判断指数をみますと、令和2年4~6月期には△45ポイントと大幅に悪化し、リーマンショック以来の低水準となりました。その後、7~9月期は△44、10~12月期は△27、1~3月期は△13と改善の兆しはあるものの、依然として厳しい状況にあります。
次に、自動車関係について令和2年度の新車販売台数をみますと、上期(4~9月)は203万台で前年同期比△22.6%とコロナ禍の影響により大きく落ち込んだため、下期(10~3月)に263万台で前年同期比8.7%増と回復したものの、年度合計では466万台で前年同期比△7.6%となり、5年ぶりに500万台を下回った状況となっています。
一方、自動車業界においては、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を中心とした次世代技術が急速に進展するとともに、異業種との連携による技術開発や新たな業態の出現等大きく変化しています。
また、自動車整備分野においても、上記次世代新技術に対応すべく、道路運送車両法が改正され、自動車の電子制御技術化に対応した「特定整備制度」がスタートしました。これを踏まえ、自動車整備業界においては、特定整備制度に対応する人材育成や整備スペースの確保問題、更には人材の高齢化にも対応することが求められております。
このような大きな環境変化のなか、自動車の整備機器メーカーの集まりである我が工業会においては、自動車の安心・安全の追及を重要課題とし、会員企業における意見交換や各種情報の提供を積極的に行っていくことが必要であると考えております。
例えば、現下の厳しい環境変化に迅速に対応するため必要となる「中小企業支援」に関するセミナーの開催、整備機器分野でのビジネスチャンスの拡大や新商品開発につながっていくような特許技術などの情報提供活動を積極的に実施してまいりました。
また、自動車工業4団体は、令和2年4月、会長、理事長による共同記者会見を行い、新型コロナウイルス危機の克服と復興に貢献していく旨の決意表明を行いました。
この表明を踏まえ、自動車工業4団体が連携し、フェイスシールド等の医療物資を提供するとともに、自動車工業の生産現場における人材や生産技術等ものづくりの基盤を守るため、現場リーダー層の人材育成事業等を実施いたしました。
今後、自動車産業をめぐる環境が大きく変化し、自動車の構造や所有形態の変化が想定されていますが、移動手段としての車の必要性や重要性には変わりがないものと思います。そして、車そのものが存在するならば、その安心・安全を確保するために必要となる点検、整備機器の役割は今以上に増大するものと思います。
当工業会各社においては、これら整備業界の課題に対応すべく、クルマの安心・安全と環境を支えるサービスツールメーカーとしてユーザーニーズを積極的に把握し、次世代の整備を見据えた新商品開発や安全の質的向上を図っていくことが必要であると考えています。
工業会におきましては、以上の状況を踏まえ、今後とも会員各社のお役に立てるよう積極的に情報発信を行っていきたいと考えております。
2 会員の増強
令和2年度は、正会員の退会1社、賛助会員の新規加入1社をお迎えし、その結果、正会員45社、賛助会員9社 計54社体制での運営となりました。
Ⅱ 事業活動の概要
1 主要会議等の開催状況
令和2年度においては、通常総会及び理事会を以下のとおり開催しまし
た。
(1) 通常総会
通常総会は、令和2年5月28日(木)機械振興会館において開催され、以下の決議事項について審議、決定しました。
第1号議案 令和元年度事業報告(案)及び収支決算(案)の承認について
第2号議案 令和2年度事業計画(案)及び収支予算(案)の承認について
第3号議案 役員全員の任期満了に伴う選任(案)の承認について
第4号議案 その他
(2) 理事会
令和2年度においては、以下の理事会を開催し、各事項について審議、報告を行いました。
第1号議案 令和元年度事業報告(案)及び収支決算(案)の承認について
第2号議案 令和2年度事業計画(案)及び収支予算(案)の承認について
第3号議案 役員全員の任期満了に伴う選任(案)について
第4号議案 令和2年度通常総会について
第1号議案 理事長、副理事長2名、専務理事の選定について
第1号議案 令和2年度事業実施計画(案)について
第2号議案 その他
第1号議案 賛助会員の入会承認について
(報告)令和2年度上期中間決算について
(3) 監事監査
① 令和元年度の決算をとりまとめ、令和2年4月30日(木)に監
事監査を行いました。
② 令和2年度上期(4~9月)の中間決算を取りまとめ、令和2年12月22日(火)に監事監査を行いました。
2 講演会、セミナー等の開催状況
会員企業の経営、技術等に関する知識の習得、情報の収集・提供の機会となり得るよう、次のとおりオンラインセミナーを開催し、意見交換を行いました。
「中小企業政策」について、経済産業省中小企業庁広報相談室 工藤勝弘室長による講演会を開催いたしました。(総務委員会、技術委員会共催)
(令和2年8月27日、オンラインセミナー、24名参加)
「現場リーダー層の人材育成」の一環として、自動車業界全般で使用す
る「ねじ締め」に関する「トルク講習会」をオンラインで開催いたしま
した。
(令和2年11月20日、全国65社、110拠点参加、自機工会員
16名参加)
(3) サイバーセキュリティーセミナー
中小企業と情報セキュリティーリスクへの対応等についての講演。
SONPOリスクマネジメント(株)
サイバーセキュリティー事業本部特命部長 落合正人氏
(令和3年2月17日、オンラインセミナー、16名参加)
製造製品クレームに関する海外でのPL訴訟やPL賠償事故事例についての講演。
損害保険ジャパン(株)法人保険金サービス課特命課長 藤枝東人氏
(令和3年2月17日、オンラインセミナー、16名参加)
3 分科会活動状況
(1)故障診断分科会
① 自動車整備技術の高度化検討会関係
国土交通省は、自動車の電子制御化に対応した点検・整備の検討を行うため、「自動車整備技術の高度化検討会」を設置し、積極的な議論を行っています。
ア 当工業会からは、技術委員会故障診断分科会会長が参加し、高度化検討会の重要な事項である「(スキャンツールの)標準仕様のあり方検討WG」の議長として積極的な意見交換、提案を行いました。
令和2年度の当工業会の故障診断分科会は、「標準仕様のあり方 検討WG」の開催に併せて6回開催し、高度化検討会での検討内容の報告や、新たな運用ルールでの故障診断装置開発情報提供に関する問題点の検討等活発な活動を行いました。
イ また、改正道路運送車両法による特定整備事業は令和2年4月1
日から運用が開始されましたが、この特定整備事業に必要となる
「整備用スキャンツール」については、国土交通省告示により「技
術上の基準」が設けられております。
当工業会は、国土交通省からの要請に基づき、上記「技術上の基準」
に適合している整備用スキャンツールを各ツールメーカーから名簿
提出いただき、一覧表を作成のうえ、当工業会のホームページに掲載
いたしました。
ウ 他方、当工業会では、標準仕様の汎用スキャンツールの開発に必
要なカーメーカーからの情報提供について、各スキャンツールメー
カーからの問い合わせ等に対応していくため、カーメーカー12社
から委託を受けて外部故障診断装置開発情報提供等の窓口機能を
引き続き実施しました。
OBD車検に必要となる法定スキャンツールについては、詳細な仕様や要件が定まっていないため、(一社)日本自動車機械工具協会とともに、「法定スキャンツールの認定要領」(案)を作成し、国土交通省等と協議を行いました。
(2) 工具分科会、タイヤ整備分科会
① ホイール・ボルト破損等による大型自動車の車輪脱落事故の発生件数が3年連続で増加したことを踏まえて、国土交通省は「大型車の車輪脱落防止対策に係る連絡会」を設置(令和元年10月25日)しました。
この連絡会においては、更に効果的な事故防止策を追加的に策定し取り組むため、連絡会の傘下に調査検討を行うワーキンググループを設置することが決定された。
第1回目のWGは、令和元年12月12日に開催され、車輪脱落事故防止に関する取り組み状況等について、アンケート調査を実施するべく調査項目等の検討が行われ、当工業会の会員企業からも専門家が出席し、意見交換を行いました。
第2回のWGは令和2年9月16日に開催され、アンケート調査結果及び車輪脱落事故防止対策の方向性についての中間とりまとめ案を審議検討しました。
第3回WGは令和2年10月30日に開催され、これまでの検討内容を「中間とりまとめ」として決定いたしました。
国土交通省においては、上記「中間とりまとめ」を踏まえ、令和2年
11月1日~令和3年2月28日において「事故ゼロを目指して!大型
車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を実施したところです。
② また、当工業会は、自動車点検整備推進協議会の一員として、工具機器分科会及びタイヤ整備分科会メンバーへ以下のチラシを配布し安全啓蒙周知活動に引き続き協力しました。
チラシ :「火災・車輪脱落・車体腐食防止のために しっかり点検・
整備しましょう」
4 各種調査等の実施
業界の実態や状況の推移を把握するため、会員を対象に以下の調査を実施し、結果を取りまとめHP及び業界紙等を通じて公表しました。
(1)生産実績調査 (「参考資料6」参照)
機種別に生産額を調査するもので、毎年4月に前年度分につき実施。令和2年度は、前年度と比較し10億円減の384億円(対前年度比△2.4%)となっています。
また、機種別の構成比をみますと、工具が全体の1/4を占め(26.8%)、次いで油圧機器(20.5%)、洗浄機(17.9%)、試験機器(11.3%)、電気機器(5.9%)となっています。
(2)輸出動向調査
機種別・市場別に輸出額を調査するもので毎年6月に前年度分につき実施。令和元年度の輸出額は、前年度と比較し1,366百万円増の7,443百万円(対前年度比22.5%増)となっています。
増加額の内訳をみますと、北米向け631百万円増、西欧向け448百万円増、中国を除くアジア向け107百万円増となっており、この3地域で増加額全体の86.8%を占めています。
市場別に輸出額の構成比をみますと、中国を除くアジア向けが43.7%(前年度:51.8%)、中国向け15.8%(同18.8%)、北米向け24.0%(同19.0%)となっており、この3地域で全体の83.5%(同89.6%)を占めています。
また、機種別の構成比は、工具が大半を占め(72.3%)、次いで油圧機器
(14.3%)、電気機器(5.1%)、車検機器(3.5%)となっています。
(3) 企業動向調査
主要経営指標の現状及び見込みを調査するもので、毎年4月に当該年
度分を実施し、その結果を総会時の資料に添付するなどして公表してい ます。
令和3年度調査時には、前年度調査に引き続きトピックス項目として
「賃金改善の状況」並びに「雇用環境」について取りまとめました。
新型コロナウイルス感染症対策については、令和2年4月に1回
目の緊急事態宣言が発令され、5月25日には全国的に宣言解除と
なりました。
これを踏まえ、新型コロナウイルス問題が会員企業の経営に与え
た影響ついて、令和2年6月にアンケート調査を行いました。
(調査結果の概要)
緊急事態宣言が発令されていた4月、5月においては、回答企業
(12社)のうち大多数の企業が、売上額において前年同月比△5%
以上減少したと回答。
特に5月においては、回答企業のうち半数が、売上額において前年
同月比20%以上減少したと回答。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、第3波の感染拡大となる直前の令和2年12月に第2回目のアンケート調査を実施いたしました。
(調査結果の概要)
新型コロナウイルスの感染拡大の第2波となった7月~9月期は、
回答企業(14社)のうち6割以上の企業が、売上額において前年同
期比5%以上減少したと回答。
その後、10月、11月、12月は回答企業のうち半数の企業が、
売上額において、それぞれ前年同月比5%以上減少したと回答。
5 海外情報の収集、取得、提供
(1) 海外視察団の派遣
新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止とさせていただきました。
(2) 輸出実績調査
工業会会員の令和元年度自動車機械器具の輸出実績を調査し、販売事業者団体である(一社)日本自動車機械工具協会が同会員を対象に行った輸出調査の結果と併せて集計し、業界の統計データとして作成・公表しました(令和2年8月)。
令和元年度の輸出額は、前年度と比較し21.8億円増の111,8億円(対前年度比24.2%増)となっています。
増加額の内訳をみますと、中国を除くアジア向けが6.3億円増、北米向け6億円増、西欧向け4.4億円増、中国向け2.8億円増となっており、この4地域で増加額全体の89.7%を占めています。
市場別に輸出額の構成比をみますと、中国を除くアジア向47.5%(前年度51.9%)、中国向け16.8%(同17.7%)、北米向け22.6%(同21.4%)となっており、この3地域で全体の86.8%(同91.1%)を占めています。
機種別では、工具(52.1%)、次いで油圧機器(10.3%)、車検機器(6.1%)、電気機器(3.5%)となっています。
6 広報活動の推進・情報提供
(1) ニュース便覧を通じた情報提供
自動車関連の「特許出願公開目次(抜粋)」情報や関係業界動向、経済市場動向に係る関連事項を選定・要約した「ニュース便覧」を編集し、年9回(1月、4月、8月を除く。)HP上に公開するとともに、各会員に対し冊子の配布を行いました。また、関係団体の図書施設にも配布するなど情報提供活動を行いました。
(2) 報道機関への情報提供活動
当工業会の業界活動に関して、随時、業界紙及び専門雑誌等の報道機関、出版社への情報提供に努めるとともに、更なる浸透を図っていくため、理事長インタビュー(7/13)の機会等を活用して理事長メッセージの発信強化に努めました。
(3) ホームページ等による情報提供
工業会の組織、会員、事業報告及び決算状況に関する情報のほか、生産、輸出等の諸統計、調査結果を公開しました。
また、自動車工業4団体連携事業について、各団体所属企業による医療現場支援状況や、製造現場における感染防止対策の事例紹介の掲載等、ホームページ上の情報提供に心掛けました。
(4) 大型車車輪脱落防止のための日頃の点検・整備の重要性についての周知(再掲)
自動車点検整備推進協議会の一員として、工具機器分科会及びタイヤ整備分科会メンバーへ以下のチラシを配布し安全啓蒙周知活動に引き続き協力しました。
チラシ :「火災・車輪脱落・車体腐食防止のために しっかり点検・
整備しましょう」
(5) 工業会商標「JAMTA」マークの活用
工業会の認知度の一層の向上及び工業会会員であることの企業イメージアップを目指して、工業会の商標登録である「JAMTA」マークの積極的活用のため、関連印刷物及び名刺広告を通じて業界紙にマークの掲載を行いました。
また、「JAMTA」マークを活用したQRコードを作成し、工業会の普及・広報に努めました。
7 自動車工業4団体連携事業の実施
令和2年度は、年度当初から新型コロナウイルスが蔓延したことを踏まえ、自動車工業4団体は、新型コロナウイルス危機の克服と復興に貢献するため、4団体が連携し、
人材育成や「生産性向上のための現場改善指導」等を実施しました。
当工業会会員各位においては、「医療物資の提供」の一環として、マスク
や消毒液さらにはフェイスシールド等の提供を行いました(4社、5件)。
また、「現場リーダー層の人材育成」の一環として、自動車業界全般で使
用する「ねじ締め」に関する「トルク講習会」をオンラインで開催(令和2
年11月20日)いたしました。(再掲「参考資料4」参照)
(全国65社、110拠点参加、自機工会員16名参加)
8 その他の事業
令和3年2月17日(水)、「製造製品クレームへの対応」に関するセミナーを開催し、海外におけるPL訴訟やPL賠償事故事例等を理解していただきながら会員からの加入申し込みを受け、工業会でとりまとめて、より低い料率でPL保険を付保しました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、永年勤続優良従業員表彰、新年賀詞交歓会(4団体、2団体)、二団体執行部懇談会は中止とさせていただきました。
9 会議の開催状況
(1)通常総会
令和2年5月28日
(2)理事会
第1回 令和2年5月18日(書面)
第2回 令和2年6月 9日(書面)
第3回 令和2年8月 4日
第4回 令和3年1月25日(書面)
(3) 監事監査
令和元年度決算監査 令和元年 4月30日
令和2年度元中間監査 令和2年12月22日
(4) 委員会、分科会の開催数
ニュース便覧編集会議 6回
(分科会等)
故障診断分科会 6回
(5) 自動車工業4団体トップ懇談会
第1回 令和2年 4月10日(オンライン)
第2回 令和2年 7月 9日
第3回 令和2年 9月24日(オンライン、5団体)
第4回 令和2年12月17日(オンライン、5団体)
第5回 令和3年 3月11日(オンライン、5団体)